Wednesday, November 14, 2007

<殺人未遂>DVD基に調書却下…大阪地裁「誘導の可能性」

同じアパートに住む男性を刃物で刺して大けがをさせたとして殺人未遂罪に問われた蓮井一馬被告(88)の公判で、大阪地裁(西田真基裁判長)は14日、検察官が作成した蓮井被告の自白調書について「(供述を)誤導した可能性は否定できない」として証拠採用しないと決定した。西田裁判長は7日の前回公判で上映した取り調べ状況を録画・録音したDVDを検討し、調書に任意性がないと判断した。

 検察当局は09年春にスタートする裁判員制度に向け、自白の任意性を立証するために取り調べ状況を撮影する試みを昨年夏から始めた。大阪地裁がDVDを基に調書の任意性を否定したことで、検察側は取り調べ方法の再考を迫られそうだ。

 DVDは起訴当日の5月29日、検察官が4日前に作成した調書を読み聞かせて確認する様子が35分間にわたり録画されていた。蓮井被告は高齢のため著しく聴力が低下しており、検察官の質問をどこまで理解しているかが争点だった。

 西田裁判長は、蓮井被告が「殺そうとは思わんかったけど腹立ったからね」と殺意を否認しているのに、検察官が「殺さんかったら、殺されると思ったんやね」「殺そうと思ったに間違いないね」と念を押す場面など複数の問題点を指摘。「一応、問答は成立しているが任意性に疑いがあると言わざるを得ない」と述べ、「被告の理解力の低さを認識しながら、あえて供述を誤導した疑いがある」と結論付けた。

 蓮井被告は公判で殺意を否認。弁護側は、DVDによって調書の任意性に疑いがあることが明らかになったとして、調書を証拠採用しないよう求めていた。【川辺康広】

 ◇録音・録画進めよ

 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 DVDによって取り調べ経過が検証できることが明らかになった。自白は最も重要な証拠なのに、公判になると否認に転じる現象が日本では起きてきた。密室で検察官が言い分を被告に押し付け、調書が証拠採用されてしまう問題が放置され続けてきたとも言える。英国や豪州では可視化を前提に取り調べ技術を磨いているし、可視化で自白率や有罪率は低下していない。日本でも自白調書が安心して証拠として使えるよう録音・録画を進めるべきだ。

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